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弁政連フォーラム 第364号 令和6年1月15日

年頭所感

日本弁理士政治連盟会長 福田 伸一

日本弁理士政治連盟
会長 福田 伸一


新年を迎え、日頃より日本弁理士政治連盟の活動にご理解・ご支援を頂いている会員の皆様に心より感謝申し上げます。

令和6年能登半島地震により被災された皆様にお見舞いを申し上げます。一日も早く安全で健康的な日々を取り戻すことができますようお祈り申し上げます。

さて、昨年7月に公表された、経済産業省の「我が国の民間企業によるイノベーション投資の促進に関する研究会の中間とりまとめ」において、「イノベーションボックス税制」について言及されておりました。

この「イノベーションボックス税制」とは、イノベーションの循環をはかるための政策措置中、初期の「魔の川」、中期の「死の谷」の先にある「ダーウィンの海」を越えて更なる発展をはかるために必要な政策であって、特許等の知的財産から生じる所得に優遇税率を適用するものです。

ここで、前記研究会においては、OECD修正ネクサスアプローチに沿って、イギリス、オランダ等に倣い、特許等の知的財産から生ずる「ライセンス料」、「譲渡収入」、「対象製品等の売却による利益(Embedded IP)」に優遇税率を適用する方向性で検討されておりました。

特に、「対象製品等の売却による利益」に対する優遇税率適用は、少数の自社特許権等に対応する製品等の販売を通じて成長を遂げようとするスタートアップ企業や中小企業にも有効な政策であり、漸く我が国も欧米並みの政策が採用されるようになったと思っておりました。

しかし、令和5年12月22日に閣議決定された「令和6年度税制改正の大綱」において、「イノベーションボックス税制の創設」という項目は設けられたものの、優遇税制の対象は特許権等の譲渡収入及び貸付(ライセンス)収入のみであり、「対象製品等の売却による利益」を優遇税率にするとは記されておりませんでした。

多くの場合、特許権等の譲渡収入は多数特許権を所有する大企業の収入が対象であり、貸付収入の多くは親会社が子会社にライセンスすることによって得られる収入が対象です。すなわち、何れの優遇税率対象も少数の特許権等を自己実施(製品化)することで収入を得て成長しようとするスタートアップ企業や中小企業にはほぼ関係がありません。

スタートアップ企業や中小企業は、これまでと同様、国による税制上の援助を受けずに自力で「ダーウィンの海」を越えて成長していかなければなりません。

なぜ、このような腰砕けの制度になってしまったのでしょうか?

経済産業省の研究会での議論は、時間の無駄だったのでしょうか?

GAFAのような世界的新興企業が我が国から誕生するというのは夢物語なのでしょうか?

政治家の皆様には、「衰退途上国」のレッテルを貼られつつある我が国が光を取り戻すための有効な政策の一つとして、今一度、真剣にイノベーションの循環を政治の場で議論していただきたいと考える次第です。

「年頭所感」とは「年の初めに際して抱負を述べること」とあります。

本来であれば、春に施行される特許出願非公開制度、現在内閣府において検討されているセキュリティクリアランス等の政策課題、日本弁理士政治連盟の地域活動、財政状況等の課題を中心に記すべきであったかもしれませんが、喫緊の課題としてイノベーションボックス税制に特化して意見させていただきました。

もちろん、前記課題についても、しっかり取り組んでまいる所存でございます。

皆様におかれましては、引き続きご指導、ご鞭撻のほど、お願い申し上げる次第です。

末筆ではございますが、皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。

この記事は弁政連フォーラム第364号(令和6年1月15日)に掲載したのものです。

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