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ロビー活動に関心を!
  

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日本弁理士政治連盟
副会長 中島 三千雄
 (1)知的財産制度の発展のために
 長期に亘るデフレ経済下に更に追い討ちをかけた昨年の東日本大震災にて、国内産業が大打撃を受けた状況下、弁理士であれば、その力を発揮することの出来る知財制度を通じて、国内産業の復興、復活、そして再度の発展に寄与したいと願うことは、当然とするところである。
 そして、そのためには、知財制度を時代や社会の要請に沿うべく運用し、必要ならば、適正且つ迅速に法改正を行なう必要があるのであるが、これまでの知財制度に対する我が国の対処が適正であったか、どうかは、大いに疑問とするところである。例えば、特許においては、審査請求料の大幅な値上げ、審査請求期間の短縮、権利者を不当に萎縮させる104条の3の制定や、商標においては、登録料の大幅な値上げ等があった。それらが、知財制度を利用する側において、果たして、妥当なものであったのであろうか。小生にとっては、それらは、行政サイドの都合のよい運用であったり、法律や政令の改正であったとしか、思われてならない。
 この知財制度に立脚して、その有効な利用を図り、産業の発展に寄与するとの使命を有する我々弁理士にとって、知財制度が適正に運用され、発展するように、それを利用する者の側に立って、立法者に対して、また運用者に対して、必要な意見を述べ、更に法改正や政令の改正を促す活動を行なう必要がある。
 ところで、法律の改正や政令の改正、そしてそれらの運用に関しても、立法府に所属する政治家が大きな影響力を持っていることは、周知の事実である。しかし、政治家が知財制度の現状を充分に把握し、その問題点や対応策を熟知しているとは、到底考えられない。このような政治家に対して影響を与えようとして、ある人々が組織的に行なう試みが、「ロビー活動」と称されるものであって、デモクラシー
(民主主義)には必要とされているものである。即ち、ロビー活動が、政治の世界に、社会に存在する要望を伝える、所謂政治と現実の両方の世界を繋げる活動であって、特に、利益団体の政治参加の手段として、デモクラシーには、どうしても必要となるのである。
 このため、ロビー活動の盛んなアメリカでは、そのようなロビー活動に長けたロビイストが3万人もいると言われ、利益団体のために、政治家達に働きかけを行っている。嘗ては、日本の企業や利益団体にあっても、バブル経済のときに、年間1億ドルもの巨額の資金を使って、ロビイストを通じてアメリカ議会に働きかけを行ない、また3億ドルもの資金を投入して、アメリカの対日世論を改善しようとしていたのであるが、バブル経済の崩壊以降は、日本企業や利益団体が使える資金がなくなったことにより、ワシントンでの日本の存在感はなくなってしまったとのことである。
 これに対して、日本の事情はというと、官僚たちに対して、利益団体が頭を下げる「陳情」にて、自分たちの要望を伝えるということが行われているのであるが、それは、デモクラシー以前の行動であって、そのような「陳情」では、法律の制定や改正、その運用に、行政サイドの都合が大きく反映され、果たして、国益に沿う政策が実現され得るのかどうか、甚だ疑問とするところである。

(2)ロビー活動は日本弁理士会では出来ない
 弁理士法第56条第2項には、弁理士会の設立目的として、「弁理士会は、弁理士の使命及び職責にかんがみ、弁理士の品位を保持し、弁理士の業務の改善進歩を図るため、会員の指導、連絡及び監督に関する事務を行い、並びに弁理士の登録に関する事務を行うことを目的とする。」
ことが挙げられ、その活動内容が規制されている。
 尤も、弁理士会には、上記の目的の他、弁理士法第68条において、「弁理士会は、弁理士に係る業務又は制度について、経済産業大臣又は特許庁長官に建議し、又はその諮問に答申することができる。」として、建議や答申を行なうことも出来ることとなっているが、その相手は、経済産業大臣や特許庁長官に限られ、それは、あくまでも行政サイドに対しての行為に過ぎないものであり、それが、正しく、前記した「陳情」に通じるものであることは、明らかなところである。しかも、特許庁には、弁理士会を指導、監督しているとの考えがあり、これが基本的なスタンスとなっているのであってみれば、行政サイドが、弁理士会の主張や意見に対して、どれ程耳を傾けてくれるかは、推して知るべしであろう。
 かかる状況下、我々弁理士の利益団体となる弁理士会が政治活動するには限界があり、特に政治家に対する直接的なロビー活動が出来ないことは、明らかである。
 このため、我々の利益団体である弁理士会に代わる機関として、ロビー活動を行なうべく設立されたのが、「日本弁理士政治連盟」であり、その規約の第3条において、
「この連盟は、日本弁理士会の方針に沿って、日本弁理士会の事業を達成するために必要な政治活動を行ない、以て弁理士制度及び知的財産制度の発展に寄与することを目的とする。」
との目的条項が定められ、弁理士会の方針に沿って政治活動することが謳われているのである。
 このように、弁政連は、利益団体である弁理士会の政治活動を行なう機関として設立されたものであるところから、弁理士会とは緊密な連携を取りつつ、弁理士としての良識の下、単なる弁理士会の利益、ひいては弁理士の利益に走ることなく、常に国益を最重視し、弁理士の目から見た、国益に適う知財政策や弁理士の在り方の実現に向けて、政治を通じて活動を行なっているのである。

(3)弁政連のロビー活動とその円滑な推進のために
 弁政連のロビー活動の詳細やそれによる成果については、毎月の弁政連フォーラムにて明らかにされているところであるが、その直近の大きな成果の一つとして、「弁護士法人等に関する法律案
(仮称)」に対する弁理士会の意見の反映を挙げることが出来る。具体的には、外国法事務弁護士の法人化に関する法律案であって、その中に盛り込まれていた、知財業界に対して多大な影響をもたらすと考えられる「日本弁護士及び外国法事務弁護士が共に社員となり、法律サービス全般の提供を目的とする法人制度(B法人制度)」の導入の撤回が、弁理士会と連携した、知財関係国会議員に対する弁政連の猛烈なロビー活動にて、実現したことである。
 そして、今後の弁政連の活動は、弁理士法の改正に向けて、我々弁理士業務の社会的認知、その活動範囲の拡大、優れた人材の確保等、弁理士会の方針に沿って、その改正項目の実現に早急に取り組むこととなっている。
 このように、弁政連は、弁理士の利益団体となる弁理士会の政治活動の機関として、弁理士会の方針に沿って、特定の政治思想に偏倚することなく、公正な立場に立って、弁理士の持つ知性と良識の下に、弁理士の立場からの主張を政治に反映させるために、活動しているのである。
 しかし、このような弁政連の活動に関して協力や支援を求めたとき、我々弁理士の中では、政治には興味がないとか、政治には関わりたくないという人が極めて多いことは、弁理士会にとってマイナスであり、ひいては弁理士活動、更には知財制度の適正な発展を阻害するものと言わざるを得ない。現実の政治を見たとき、一般市民がもっと声を大きくして、よりよい政治が実現されるようにすることが叫ばれている中、弁理士にあっても、その利益団体である弁理士会、ひいては弁政連をサポートすべきであることは、常識人である弁理士であれば、容易に理解され得ると考えるものである。このように、政治に関心を持ってこそ、デモクラシーと言うことが出来るのに、政治から目をそむけることは、自分自身がデモクラシーを否定することになるのではないだろうか。
 そして、全ての弁理士の方々に、知財制度や弁理士制度の健全な発展のために、弁理士会に代わる弁政連のロビー活動をサポートして頂きたいと願っている。この弁政連のロビー活動に直接に関与して頂けるのであれば、願ったり、叶ったりであるが、そこまでは、と考える方々にとっては、弁政連の活動に大いに寄与する会費の納入ということで、金銭的なサポートをして頂きたいと願っている。政治から目を離さず、また、我が国の知財制度の発展、ひいては産業の発展のために、是非政治に関心を持って、弁政連にお力添えを頂きたいと願っている次第である。


この記事は弁政連フォーラム第230号(平成24年4月25日)に掲載したのものです。
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