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ロビー活動にご理解を!



  

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日本弁理士政治連盟
副会長 奥 村 茂 樹


1.ロビー活動の定義


ロビー活動という用語に確たる定義はない。「政治家に対して行われる各種団体や陳情団などの働きかけ」という程度の意味に解されている。この政治家とは、議会の議員のみを意味するのか、それとも行政府に属する官僚をも含むのか、広くなんらかの権限を有する公人一般をも含んでいるのかは定かではない。しかし、日常的な使用例を参考にすると、オリンピックの誘致やレスリング存続がロビー活動の成果であると報じられており、最も広い意味で使用されているようである。

2.日本弁理士会とロビー活動

日本弁理士会(以下、「弁理士会」という。)はロビー活動を行えないとの解釈が通用しているようであるが、広い意味でのロビー活動は法律で認められている。すなわち、弁理士法68条に、「弁理士会は、弁理士に係る業務又は制度について、経済産業大臣又は特許庁長官に建議し、又はその諮問に答申することができる。」と規定されており、行政府の長に対して建議や答申が行えるのである。建議や答申をするにあたっては、行政府の官僚との専門的事項に関する説明、討議又は陳情などの場を持つ必要性があり、これこそ正にロビー活動そのものである。ロビーでくつろぐ行政府の長であるアメリカ大統領に陳情などを行ったのが、ロビー活動の語源であるが、この語源からみても、弁理士会がロビー活動を行えるとの解釈は正当であると考える。
弁理士会が立法府を構成している国会議員に対して、ロビー活動が行えるか否かというと、これは行えないとの解釈で合意されているようである。ただ、経済産業大臣や副大臣は多くの場合、国会議員であることから、かかる解釈も、もう少し柔軟性をもって考えて頂きたいと思う。

3.日本弁理士政治連盟とロビー活動

日本弁理士政治連盟( 以下、「弁政連」という。) は、「弁理士会の方針に沿って、弁理士会の事業を達成するために必要な政治活動を行い、もって弁理士制度及び知的財産制度の発展に寄与する」( 弁政連規約3条) ために設立されたものである。ここでいう政治活動というのは、ロビー活動と同義である。すなわち、弁理士会のロビー活動には一定の制限があるが、かかる制限のないロビー活動を行うために弁政連が設けられているのである。したがって、法改正などの問題があるときには、経済産業大臣や特許庁長官だけではなく、広く国会議員に対する働きかけを行う組織が、弁政連であるといえる。
上記したところから、弁理士会と弁政連とは、弁理士制度及び知的財産制度のために積極的にロビー活動を行うべきであると考えているのである。日本ではロビー活動という用語が悪い意味で使われていることも多いが、多くのロビー活動は、決して不当なものではなく、自らの意見をしかるべき人に伝え、国やその他機関の意思決定に反映させてもらうために、重要な手段であるといえる。このことは、以下の例からも明らかである。

4.ロビー活動の例


(1) 日本における本年の行政書士法改正
本年の6月に行政書士法が改正され、行政書士に行政手続における異議申し立て及び審査請求に対して代理権が付与された。この行政書士法の改正は議員立法によりなされたものである。議員立法は、ロビー活動を受けた議員によって発議されるものであり、行政書士法の改正は全会一致で成立した。
行政書士法の改正については、弁護士会が反対声明を出しており、さらに弁護士会は各士業団体に反対の要請をしていた。弁理士会も、この反対要請を受けて反対していた。しかしながら、弁護士会及び各士業のロビー活動よりも行政書士会のロビー活動が勝っていたのである。行政書士会及び行政書士政治連盟のロビー活動が強力であることの証である。

(2) 米国における慰安婦像問題
全米各地に慰安婦像が建てられたのは、在米韓国系住民によるロビー活動によるという報道がなされている。そして、この報道は、ロビー活動に多額の金をばらまいたためであるというニュアンスで語られる。このため、ロビー活動は違法性のある不徳行為であるかのように受け取られる。
しかしながら、米国でのロビー活動はなんら違法なものではなく、合法活動として認められているものである。議員に対する働きかけに政治献金、交際費、調査費及び交通費などの必要経費を要することは自明であり、これは金のばらまきによる違法行為ではないのである。
日本のかかる報道は、米国においてロビー活動に負けたことを素直に認めたくないという思いがあるのであろう。ロビー活動を違法視にすることによって、慰安婦像は議会の議決を経て適法に建てられたものであるという真実から、目をそむけたいのかもしれない。
最近では、朝日新聞による慰安婦問題の虚報も加わり、慰安婦問題は解決困難な混迷の状況となっている。日本は米国はもとより各国においてロビー活動を活発化させなければならない。したがって、報道などではロビー活動の重要性を訴えなければならないのに、それを悪者扱いしていては、世界から孤立するだけである。

(3)IOCにおけるレスリング問題
国際オリンピック委員会(IOC) において、レスリングが競技種目から外されたことが問題の発端である。レスリングは日本のお家芸ともいえる種目であり、メダル量産が期待される種目である。しかも、古代オリンピックから存在する伝統種目であるにもかかわらずである。
これに驚いた日本では、他種目の協会のロビー活動により、日本の得意種目が外されたと大騒ぎになった。そして、伝統種目という大事な看板をも外すロビー活動を悪者扱いした。たとえば、IOC委員に金をばらまいて、伝統種目であるレスリングを外すのは不当な行為であるといったニュアンスである。
しかしながら、伝統種目であろうと何であろうと、競技種目はIOCで決定するのである。いくら伝統種目と念仏を唱えていても始まらない。そこで日本レスリング協会は、他国のレスリング協会と連携し、ロビー活動を活発化させたのである。各国のレスリング協会も伝統種目であるということからロビー活動をさぼっていたとの自覚を持ち、巻き返しに全力でロビー活動を行った。その結果、最後にレスリングが競技種目として認められたのである。

5 . ロビー活動にご理解を

ロビー活動を悪者扱いしていては始まらない。ロビー活動は、多額の必要経費を要するが正当な活動であり、これによって世界は動いている。弁政連は会員の皆様から頂いている会費によって、ロビー活動を行っている。この会費の納入率は、残念ながらかなり低いものとなっており、十分なロビー活動ができない状況である。このため、弁政連の歴代会長は、弁理士法改正などのときには、身銭を切って活動され、弁理士の業務範囲を拡大又は死守されてきたのを、私は目の当たりにしている。
会員の皆様においても、かかる状況をご理解いただき、多くの方が会費を納入してくださるようにお願いする次第である。                
以上

この記事は弁政連フォーラム第260号(平成26年10月25日)に掲載したのものです。
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