PF-JPA


今年こそ実現を、また実現の端緒に

  

furuya.fumio
日本弁理士政治連盟
会 長 杉 本 勝 徳

 1.弁理士を知財国家戦略のインフラとして活用を
 2.中小企業の発明インセンティブを高める国家政策を
 3.弁理士が国家的使命を全うし易いように弁理士法の改正を
 4.飽和状態の弁理士試験合格者の減員を




 1.弁理士を知財国家戦略のインフラとして活用を
(1)弁理士は本年1万人を超えた我が国最大の技術集団です。しかも、全世界200ヵ国を網羅するネットワークを構築しています。このような資格者集団は、日本弁理士会以外にその存在が認められず、現代日本国家の一大財産を形成しています。
(2)この集団を単に特許庁の手続代理業者としてのみ業務を限定するのは、国家の著しい損失であり、もっと広く国家の知財戦略に直接関与し活用することが国家の力となる筈です。
(3)その活用方法として最も有効なことは、国富とも言うべき特許を始めとする知的財産を国の内外に積み上げる手段として、あらゆる技術者が存在する弁理士を利用することです。具体的には国家の知財政策に直接関与させることです。例えば知財国家戦略本部および特許庁に多くの弁理士を登用する事です。
 また、国の内外で特許を取得し易いように出願印紙税を特許独立会計とは別に国家予算として計上すると共に、特許印紙税をドラスティックに減額することです。
(4)更に大学や地方自治体に知財本部を立ち上げて弁理士を関与させることです。すなわち知的財産基本法第5条には「国は知財の創造・保護・活用の施策を策定し実施することを責務とする」旨の規定があります。また同法6条には「地方公共団体は知財の創造・保護・活用を国との役割分担において施策を策定し実施する責務を有する」旨の規定があります。更に同法7条には大学に於ける知的財産の創造に資する人材の育成に努める」旨の規定があります。
(5)知的財産基本法8条には知的財産の積極的な活用を、9条には国、地方自治体、大学及び事業者が相互に連携する事が規定されています。これらの規定を実施し実現するためには、弁理士が総ての局面において直接関与することが最も望ましいことです。

2.中小企業の発明インセンティブを高める国家政策を
(1)知的財産基本法第19条2項に次の規定があります。「・・・中小企業が我が国経済の活力の維持および強化に果たすべき重要な使命を有するものであることにかんがみ、個人による創業及び事業意欲のある中小企業者による新事業の開拓に対する特別の配慮がなさなければならない。」まさに中小企業の発明インセンティブを高めることが、法律で義務的に制定されているのです。
(2)前記の規定を実践するのは弁理士を置いて他に存在せず、全国430万社中小企業の知財施策に1万弁理士を総動員すれば、アメリカに匹敵する知財大国になれるのであり、劇的に中小企業の技術と研究開発能力が引き出されることになります。
(3)弁理士を総動員して中小企業を活性化する他に、中小企業の財政難を考慮して、アメリカのようにスモールエンティティ制度を一刻も早く設けることによって、中小企業の技術的能力を更にアップする事が可能です。

3.弁理士が国家的使命を全うし易いように弁理士法の改正を
(1)使命条項について
 弁理士法56条2項に規定されている「使命」が明確でないので、弁理士法第1条に「使命」を明記すること。
(2)相談業務について
 特許をはじめとする産業財産権の出願相談から知的財産権の権利侵害の相談に至るまで弁理士の標榜業務として規定すること。
(3)特定不正競争の見直し
 不正競争防止法2条1項4号〜15号までの産業財産権に関係するものについては特定不正競争として弁理士の標榜業務とすること。
(4)秘匿特権について
 アメリカ等諸外国において認められている依頼者と弁理士間の秘匿特権によって、裁判における特定の文書提出命令を拒否できることができる。         
(5)弁理士試験制度の見直し
 現在の弁理士論文試験には条約が含まれていない。知的財産の国際化が進む中で、弁理士になろうとする者が、国際出願に不可欠な条約を知らずに業務を行うことはできない。
(6)研修制度の見直し
 多様な研修によって必要な知識を吸収できることを考えれば、登録後の年数を考慮して研修時間と研修方法を見直すべきである。
(7)弁理士試験の免除規定の廃止
 他資格取得者、大学院終了者および選択科目合格者は永久に論文試験の一部を免除されるが、これは受験者への不公平感と知識未熟者の試験合格に繋がり、改めるべきである。

4.飽和状態の弁理士試験合格者の減員を
(1)2001年の特許出願43万9千件をピークに、わが国の特許出願は減少を続け、11年後の2012年には34万件と、10万件近く減少したのに、弁理士数はその間に2倍に増加し、低レベルの過当競争が起こっている。これは弁理士業界の問題ではあるが出願側、延いては国家国民にとっても不幸なことである。
(2)40年前は合格者70名程度であったものが、受験者数が3倍になったとしても、年間合格者700人超は如何にも多過ぎるのであって、物事には適正ということがある。現在の特許出願件数から判断すると、弁理士総数1万人をキープする考え方からすると、せいぜい年間合格者150人が限度であると思われる。
 今や、弁理士は職業として成り立たなくなりつつあり、その証拠に審査官が特例試験で弁理士になることは殆どない。



この記事は弁政連フォーラム第251号(平成26年1月15日)に掲載したのものです。
Copyright &;copy 2000 Political Federation of JPA, All rights reserved.
日本弁理士政治連盟 〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-4-2,弁理士会館内
E-mail: info@benseiren.gr.jp
Tel: 03-3581-1917 Fax: 03-3581-1890
更新日: