PF-JPA

2015年新春を迎えて

  

furuya.fumio
日本弁理士政治連盟
会 長 杉 本 勝 徳

新年おめでとうございます。
弁政連の今年の目標は以下のとおりです。

1.弁理士の活用による国富増強を
2.中小企業の発明インセンティブの昂揚を
3.更なる弁理士法の改正と今後の弁理士業
4.飽和状態の弁理士試験合格者の減員を
5.出願減少に歯止めを


 【初めに】


(1)2015年は、年末の総選挙で自公が圧勝して年が明けました。円安と株高も引き連れて安定した政権が続くようです。私たち弁政連も法改正にご尽力下さった81人の候補者の方に「推薦状」「有権者名簿」「陣中見舞い」の3点セットを持参して当選を祈願しました。その甲斐あって、応援した先生方はほぼ全員当選されました。消費税増税の先送り、中小企業対策と地方創生への本腰に加えて、法人税の引下げによる経済効果、異例の政府主導による賃上げ要請もあり、本年は景気上昇と我々の生活が良くなる期待が持てる年になるでしょうか。

(2)一方で特定秘密保護法や個人情報保護法と、安倍首相の悲願である集団的自衛権と憲法改正によって我が国がどうなるのか、という漠然とした思いが無いわけではありません。沖縄に於ける米軍基地の問題、中韓との摩擦、石油価格の急落とルーブル安、北朝鮮とイスラム国の問題と政治外交的な難問が山積しています。
自公の圧勝が今年の日本経済に及ぼす影響、更には私たち国民の生活にどのような影響があるかを注視する必要があると思います。

(3)ところで、一昨年も年頭に申し上げた通り、日本は資源の無い国と言われていますが、実は世界に誇れる3大資源があります。一つは水資源です、今一つは森林資源です。そして三つ目は1億2707万個の超精密な頭脳資源です。しかし、水資源はすっかり汚れてしまい、命の飲み水ですら外国から輸入している有り様で
す。森林資源は労働力の減少によって放置されっ放しです。その様な現状で頭脳資源だけはいまだに健在です。少しおこがましい事ですが、この頭脳資源を活かして、原発に代わる多様な再生可能エネルギーの開発を促すのが弁理士の国家的役割ではないでしょうか。

(4)昨年4月23日に弁理士法、並びに特許法、意匠法及び商標法の改正が成されましたが、その準備期間を入れると我々弁理士は2年強の時間を費やした事になります。先ず弁理士会内部で改正法案を作成して各部署で検討すること1年、そして特許庁、自由民主党知的財産戦略調査会、自民党・公明党・民主党の議員連盟及
び弁護士会をはじめ関係士業と打ち合わせること1年、通常国会が始まってからの経済産業委員会の委員の先生方60名に改正趣旨を説明して回ること数カ月と、気の遠くなる作戦でした。
弁理士法改正に多大なご尽力を賜った保岡興治先生をはじめ多くの議員の先生方にはこの場で厚く御礼申し上げます。


【今年の目標】
1.弁理士の活用による国富増強を

 昨年、弁理士は1万人を超え我が国最大の技術集団となりました。全世界200ヵ国にネットワークを構築しています。この状況は日本国家の大きな財産というべきであり、この頭脳集団を国家の知財戦略に活用することが必ずや国家の力となる筈です。その活用方法として最も有効なことは、特許を始めとする知的財産を国の
内外に積み上げる手段として、弁理士を利用することです。具体的には国家の知財政策に弁理士を直接関与させることであり、例えば知財国家戦略本部に多くの弁理士を登用することなどが考えられます。

2.中小企業の発明インセンティブの昂揚を

(1)知的財産基本法第19条第2項に次の規定があります。「・・・中小企業が我が国経済の活力の維持及び強化に果たすべき重要な使命を有するものであることにかんがみ、個人による創業及び事業意欲のある中小企業者による新事業の開拓に対する特別の配慮がなさなければならない。」まさに中小企業の発明インセンティブ
を高めることが、法律で義務的に制定されているのです。

(2)中小企業が研究開発するとき、及び開発の成果を特許出願するときに、先ず弁理士が関与し、研究開発が既に開発された技術かどうかをパテントマップ等で明確にし、研究成果を特許出願するかノウハウで温存するかを判断します。更に出願後、出願中及び権利取得後のそれぞれのステージに弁理士が関与することで、中小企業が安心して研究が出来る人的環境を整備し、権利の運用により当該中小企業の発展が期待されます。

(3)全国430万社の中小企業のうち、特許出願している企業は1%にも満たない状況であり、国も地方自治体も中小企業に対する知財政策が十分に浸透していないのが現状です。1万人を超える弁理士を総動員して430万社の知財開発をすれば、アメリカに匹敵する知財大国になることは決して夢ではなく、劇的に中小企業の技術と研究開発が活性化することになります。そして中小企業の財政難を考慮して、アメリカのようにスモールエンティティ制度を一刻も早く設けることです。また、特許を取得し易いように出願印紙税を更に減額することです。

3.更なる弁理士法の改正と今後の弁理士業

(1)弁理士法第1条に「弁理士は知的財産に関する専門家」及び「使命」条項が設けられましたが、この事は極めて大きなインパクトを弁理士と弁理士業に与えました。今までの弁理士法に知的財産の文言が全く存在しなかったので、弁理士業として、知的財産のどこまでをハンドリング出来るのか不明でした。今後は著作権を
含めて弁理士が業務とする事の道が開けました。更に「使命」条項が規定されたことにより、国家の使命を負って知財全般を扱う資格者であると捉えることができます。

(2)不正競争防止法第2条第1項に規定する不正競争のうち、弁理士は弁理士法第2条第1項第4号に規定する特定不正競争行為のみを業務として扱えることになっています。特に、不正競争防止法第2条第1項第4号〜第9号までの不正競争については、対象が技術上の秘密に関するものに限られていますが、知的財産に関係するものについては、すべて特定不正競争として弁理士の標榜業務とすることが必要です。また著作権に関する総ての業務も弁理士が扱えるように法改正すべきです。

(3)このように、今後の弁理士は、特許庁に対する手続代理に止まらず、知的財産の専門家として、知財全般にその業務を拡大していくべきです。他の資格業との調整を図り、業際で醜い争いをしないことが求められます。

(4)日本の特許出願が減少しているにもかかわらず、知的財産の国際化が進む中で世界の特許出願件数は伸びていることを考えると、現在の弁理士論文試験に条約が含まれていないことが不思議なくらいです。弁理士になろうとする者が、国際出願に不可欠な条約を知らずに業務を行うことはできないので、試験制度の改革が必要です。
更に現役弁理士の研修制度の見直しが必要です。多様な研修によって必要な知識を吸収できることを考えれば、登録後の年数を考慮して研修時間と研修方法を見直すべきです。
また、今一つ弁理士試験の免除規定の廃止が望まれます。行政書士等他資格取得者、大学院終了者及び選択科目合格者は永久に論文試験の一部を免除されていますが、これは受験者への不公平感等を招来しており改めるべきでしょう。

4.飽和状態の弁理士試験合格者の減員を

(1)2001年の特許出願43万9千件をピークに、我が国の特許出願は減少を続け、12年後の2013年には33万件と、10万件以上減少しました。一方で弁理士数はその間に2倍以上に増加し、残念ながら同業者間で過当競争が起こっています。これは弁理士業界の問題であるばかりでなく、出願する側、延いては国家国民にとっても不幸なことです。

(2)30年前は合格者が90名程度であったものが、受験者数が2倍以上になったとしても、年間の合格者600人超は如何にも多過ぎるのであって、物事には適正ということがあります。2014年度の合格者は385名と近年に比べると減少したものの、2013年度の特許出願件数から割り出し、弁理士総数1万人をキープする考え方からすると、せいぜい年間合格者200人程度が限度であると思われます。
今日、弁理士は職業として成り立たなくなりつつあり、その証拠に、20年前ま
では多くの審査官が特例試験で弁理士になっていたにもかかわらず、現在は弁理士
になる審査官が殆どいない状況です。

5.出願減少に歯止めを

(1)1万人の弁理士は、あらゆる技術を網羅し全世界にネットワークを張り巡らす日本唯一最大の技術集団です。その弁理士集団は1億2707万個の頭脳を活かし、国家のグローバルな技術開発戦略を側面から支えるインフラを構成することになります。
知財戦略の中核は発明であり特許ですが、その特許出願が我が国においては年々減少する一方、隣国中国や韓国の出願件数は相当な勢いで右肩上がりとなっています。特に中国特許庁の統計によると、2012年の特許出願65万3千件、実用新案出願74万で、特許と実用新案を合わせると実に140万件と、我が国の3倍以上の出願がなされています。特筆すべきは特許出願中、外国からの出願は11万8千件に過ぎないのに、国内出願が質はともかく量は55万件近くあることです。国内の特許出願マインドが昂揚していることは明らかで、中国の知的財産に
関する国家戦略が成功していると見ることができます。

(2)特許出願件数の増大を図るには、あらゆる方法を講じなければなりませんが、関西特許庁構想も一つの方法だと思われます。その理由は、関西の中小企業は、出願に拒絶理由通知を受けても、審査官と面接することがままなりません。その理由は上京する交通費がネックなのです。弁理士と発明者が上京すると10万円以上の
経費が必要です。特許庁が関西にもあれば、東京の中小企業と同様に殆ど交通費をかけずに審査官と面接ができるなど、知的財産の権利化等に大きく貢献することが予測されるからです。


最後になりますが、我々弁政連の経済的な基盤は、会員の方々からの浄財である会費に依存しています。正規会費は年額20,000 円(自動振替の場合は年額19,000 円)ですが、昨年「サポーター制度」を新設しました。「サポーター制度」とは、これまで正規会費を納入したことがなく、かつ弁理士の通算登録年数が20 年未満の方々
を対象とした制度であり、会費は月額1,000 円です。会員の皆様におかれましては、弁政連の活動にご理解いただき、会費の納入についてご協力くださるようお願いします。




この記事は弁政連フォーラム第263号(平成27年1月15日)に掲載したのものです。
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