弁政連フォーラム 第274号 平成27年12月15日
平成27年11月24日に自由民主党本部において、政務調査会「知的財産戦略本部(知財紛争処理システム検討会)」が開催され、日本弁理士会の塩野谷英城副会長、及び日本弁理士政治連盟の福田伸一副会長が出席しました。
検討会の三宅伸吾座長による司会の下、調査会の保岡興治会長は「知財保護の分野に関し、日本の裁判所が認める損害賠償額は低く、各国の経済規模から比較した侵害訴訟の事件数も少なく、特許の出願件数も減少している。国際競争力のある知財紛争処理システムの構築は、安倍総理も強い期待を寄せている。」と挨拶を述べられ、検討会は進行しました。
当日の議事は「有識者ヒアリング」であり、その有識者として、知財評論家(元特許庁長官、元知的財産戦略推進事務局長)の荒井寿光氏、日本知的財産協会常務理事の別宮智徳氏、及び日本弁理士会知財システム検討委員会委員長の杉村純子会員が登壇しました。
荒井氏は「知財裁判の再生により1億総活躍社会に貢献」、別宮氏は「知財紛争システム強化についての産業界意見」、杉村会員は「知財紛争処理システムの見直しに向けた日本弁理士会からの提言」と題した講演を行いました。
荒井氏及び別宮氏の講演に引き続き、杉村会員は中小企業の観点から「利用者からの信頼性や満足度が高く、国内外の紛争解決手段として、日本の知財紛争処理システムが利用されるようにすべきである。」、「特許権者と権利者以外の第三者の立場も踏まえ、かつ、公平性・妥当性を具備した知財紛争処理システムを構築すべきである。」、「差止請求権が最も有効な権利行使である。」、「タイムリーな権利取得のため、事業化に合わせたタイミングによる審査の開始システムを導入すべきである。」、「裁判所における無効の抗弁と特許庁における無効審判は、企業の事業戦略と関係していることから、制限すべきではない。」、「調査官や専門委員などの専門人材を積極的に活用すべきである。」、「米国のような懲罰的な損害賠償制度は導入すべきではない。」、「寄与率に関するガイドラインを策定すべきである。」、「訴訟費用(印紙代)の軽減措置を新設すべきである。」、「知財紛争処理に関する情報公開を拡充すべきである。」及び「地方における知財紛争処理システムに対するアクセス性を改善すべきである。」などと発言しました。
最後に保岡会長は「三者間に意見の相違が見受けられたが、知財紛争処理に関する制度改革の根幹をなす事項であることから、より幅の広い意見聴取が必要である。」と述べられ、検討会は終了しました。
この記事は弁政連フォーラム第274号(平成27年12月15日)に掲載したのものです。
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