弁政連とは会長あいさつ役員紹介(組織)会費のご案内規約お問い合わせ

弁政連フォーラム 第293号 平成29年7月15日

知的財産権制度について
「日本国憲法」に加憲する意義

日本弁理士政治連盟会長 水野勝文

日本弁理士政治連盟
会長 水野 勝文

資源の乏しい我が国にとって、技術等、広く見れば、ノウハウやブランド、著作物等を含む知的財産は、グローバル経済下にあって国富を富ませ、国民の幸福を追求する上で極めて重要である。さらには、国際競争力を持つ観点から、新たな知的財産を生み、かつ、社会に影響を与え変革を齎す、技術・社会のイノベーションのスピードが肝要である。

とりわけ我が国においては、高齢化・少子化等の社会問題を抱えており、このような現在あるいは将来の社会問題に対して解決手段を見い出していく上からも、技術・社会のイノベーションの促進が重要であること論を俟たない。

そこで、技術・社会のイノベーションを支援推進するシステムとして理解され、歴史的にも証明されている知的財産権あるいは知的財産権制度を憲法に規定することは、未来の日本への明確なメッセージとなるし、将来の内外イノベーター達を鼓舞する大きな力となろう。

したがって、その制度の社会重要性・社会基盤性に鑑みれば、日本国憲法初の改正項目の一つとして取り上げられたとしても全く不思議ではない。

知的財産権制度は技術・社会のイノベーションを支援推進するシステムであるべきであり、決してその足を引っ張るシステムであってはならない。

念のため付言すれば、ベンチャー企業、中小企業に限らず、大企業にあっても、イノベーションを起こし新事業を立ち上げようとする人々は、負担とリスクを背負い競争の場では弱者である。知的財産権あるいは知的財産権制度がなければ、イノベーションにつながる価値ある技術情報は容易に流出拡散し、濫用・盗用される上、イノベーターの意欲を挫くことになる。結果、国際競争力の低下を招くことは必定である。

弱者であってもイノベーションを起こそうとする人々を、知的財産権制度によって支えることにより、はじめて、知的財産を生み、育み、承継し、変化し、次のイノベーションのきっかけや土壌となり、全体として社会に貢献する技術・社会のイノベーションを支援推進することができるものと考える。

グローバル経済の現状に鑑みれば、少なくとも、地方にあっても、自力で世界で戦える程度まで育てるのが理想であろう。

日本の知的財産権制度においては、永年、このような現実に配慮した運用がなされてきたところであり、このような知的財産権制度は我が国の技術立国・国土強靱化の目標・歴史からしても国是であり、それゆえ日本国憲法に明記し、未来の日本社会の幸福実現のきっかけとすべきである。

知的財産権の概念は既に、憲法第29条第1乃至3項に規定されている財産権の一種として発達し確立していると理解している。この点に異論はない。

けれども、上述の通り、知的財産権あるいは知的財産権制度の社会貢献機能は、技術・社会のイノベーションを支援推進するシステムにある。通常の財産権とは全く異なる「イノベーションの支援推進」という国民・社会への貢献機能を果たすべき制度であるので、単に財産権の一種として特記する規定に留まることなく、同時に、知的財産権が技術・社会のイノベーション支援推進システム等の社会貢献の意義・役割を持つことも規定すべきではないかと考える。これは、第29条第2項の「公共の福祉に適合するよう」との趣旨とも合致するものと考える。

以上

本書面を平成29年6月6日付けで自由民主党の「保岡興治」先生に提出したところ、敬意を表してくださいました。また、『知的財産戦略の推進に携わる皆様には、是非とも、ご議論ご検討いただくことを期待しております。』という有り難いコメントもお寄せくださいました。

この記事は弁政連フォーラム第293号(平成29年7月15日)に掲載したのものです。

←前のページへ戻る