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弁政連フォーラム 第300号 平成30年2月15日

弁政連フォーラム300号に寄せて

日本弁理士会、日本弁理士政治連盟 元会長 古谷史旺

日本弁理士会
日本弁理士政治連盟
元会長 古谷 史旺

私が日本弁理士政治連盟の会長を経験させて頂いたのが、平成8~10年度と平成21~23年度と平成24年度の4~9月までであった。また、日本弁理士会の会長を経験させて頂いたのが、平成25~26年度であった。

その間に起きた特筆すべき出来事を挙げたいと思う。

1)特許庁の独立行政法人化(エイジェンシー)浮上

平成9年10月に浮上した上記の問題に対処するため、私は弁政連の会長経験者にお集まり頂き対応を協議した。その結果、単に反対するのではなく『特許庁を独立行政法人化することなく、特許庁、文化庁、科技庁、農水省、大蔵省に所管が分かれている知的財産に関する行政を、特許庁を中心にした「知的財産権省」を創設すべき。』旨を謳い上げた対案で反対運動を展開することが決まった。

私は、当時の通産省・村田成二官房長(のちに「事務次官」に上り詰めた)に面会を求め、通産省の本心を確かめた。通産省は特許庁を独立行政法人化することに反対である、との確認が取れた。

そこで、日本弁理士政治連盟は、正副会長と各委員会の委員長が一丸となって、衆議院・参議院の200名を超える国会議員に対し直接面会を求め、私どもの考えを訴えて歩いた。

大袈裟ではなく命がけであった。なぜなら、日本弁理士会の監督官庁である特許庁が独立行政法人化された場合に、私ども日本弁理士会は一体どうなるのか、明るい見通しは何一つ浮かんで来なかったからである。

必死に訴えて歩いた結果、宮沢元総理をはじめとする多くの国会議員の賛同を得て、特許庁の独立行政法人化(エイジェンシー)は阻止された。

当時の特許庁長官は荒井寿光氏であったが、私たち日本弁理士政治連盟の幹部を長官室に招いて慰労してくれた。

2)「特許裁判所」の創設を陳情

平成10年1月、日本弁理士会と日本弁理士政治連盟は連名で、自民党司法制度特別調査会の保岡興治会長に対し、米国の「連邦巡回区控訴裁判所」に倣った日本版「特許裁判所」の創設を陳情した。

米国では、1982年に「連邦巡回区控訴裁判所」(CAFC)が設立され、知的財産権などの専門性を有する裁判では、専門の裁判官が裁きの任に当たる。これにより裁判の信頼性が担保されている。ところが、我が国では専門外の裁判官が担当するため、結審までに時間が掛かるだけでなく、適切な判断が望めないといった不満の声があった。

のちに創設された「知的財産高等裁判所」の先駆けであった。

3)弁理士制度100周年の記念切手 発行

平成10年10月、佐藤剛男衆議院議員を通じて強く願い出ていた標記の記念切手の発行が、60近い順番待ちを飛び越えて実現した。これは我々の熱い思いと弁理士制度の「使命」の重さ故の決定であったと理解している。

4)自由民主党に「知的財産制度に関する議員連盟」を設立

平成10年12月、自由民主党の衆・参議院議員91名の賛同を得て「知的財産制度に関する議員連盟」が設立された。会長に与謝野馨通産大臣、会長代理に保岡興治衆議院議員、幹事長に甘利明労働大臣、最高顧問に梶山静六衆議院議員が就任した。他の士業団体が羨む最高の布陣で発足した。

5)「知的財産の喫緊課題」について意見書を提出

平成21年6月、日本弁理士政治連盟は、自由民主党の「弁理士制度推進議員連盟総会」を開催して頂き、「知的財産の喫緊課題」について意見書を提出した。

特許庁と裁判所のダブルトラック問題。※特許庁の技術専門性を活かした制度設計の再構築を目指すべきことを提言。
中国によるITセキュリティ製品(対象13品目)への強制認証制度。※この問題に対し、平成21年5月13日付の読売新聞の朝刊で“企業競争力の源である知的財産や重要なノウハウが丸裸にされかねない”と懸念を表明しているとおり、「知財立国」日本の優位を揺るがす重大な問題と認識しており、これを阻止する明確な政治意思の表明が必要と提言。
地球温暖化防止対策を特許法の改正に盛り込むべきこと。※特許法の改正に際し「地球温暖化防止の一翼を担う」ことを目的規定に入れ、温暖化防止技術に対する費用の国庫負担、当該技術に対する強制実施権の設定、実施料相当額の国庫負担などを提言。

6)「外国法事務弁護士の法人化」法案の阻止

平成23年9月29日、平成23年10月7日、平成23年12月12日、平成23年12月20日衆議院議員会館、参議院議員会館、法務省において、関係国会議員及び法務省に対し、標記の法案に対し、特許制度の利用者たる産業界及び弁理士業務に重大な影響を及ぼすこと、特に外国法事務弁護士の混合法人(いわゆるB法人)が行う日本特許庁への特許出願等代理を事実上容認することに、相互主義・国益の観点から反対であることを強く訴えた。

7)自由民主党「弁理士制度推進議員連盟」総会の開催

平成25年4月23日、自由民主党本部において総会が開催され、中川秀直会長の辞任に伴う後任会長に二階俊博議員が選出され、幹事長に山本拓議員、事務局長に秋元司議員の就任が満場一致で承認された。

平成26年通常国会に「弁理士法改正法律案」を提出すること、内容については、日本弁理士会が要望している事項が実現されるよう適切な措置を講ずることを柱とした決議案が承認された。

日本弁理士会の要望事項は、①弁理士法に使命条項を新設、②弁理士試験制度の見直し、③弁理士の秘匿特権関連規定の導入、④弁理士の業務範囲の拡大、⑤一人法人制度の導入、⑥弁理士研修制度の見直し、⑦利益相反規定の見直し、⑧弁理士会の自治拡大、⑨非弁行為要件の見直しである。

8)「弁理士法の一部改正成立記念祝賀会」の開催

平成26年7月1日、ホテルオークラ東京で多くの国会議員が出席のもと、「弁理士法の一部改正成立記念祝賀会」が催された。

この度の弁理士法改正において、「知的財産に関する専門家」として、我々弁理士の「使命」が弁理士法上に明確に位置付けられると共に、出願以前のアイデア段階において、相談業務を成し得る旨の明確化など、弁理士業務が拡充されることとなった。これにより、我々弁理士が提供するサービスの更なる品質向上や、それに伴う我々弁理士の一層の活躍が期待されている。

弁理士法改正の成立を通じて、今後、我々弁理士は自らの「使命」を自覚し、知的財産権の適正な保護及び利用の促進、その他の知的財産に係る制度の適正な運用に寄与し、もって経済及び産業の発展に資さなければならないことを、深く肝に銘じたい。

以 上

この記事は弁政連フォーラム第300号(平成30年2月15日)に掲載したのものです。

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