弁政連フォーラム 第313号 平成31年3月15日
日本弁理士政治連盟
副会長 大澤 豊
去る平成31年2月15日、日本弁理士会研修所主催の研修「憲法との関係における知的財産制度について」を受講した。印象深い研修であったので、簡単ではあるが受講記を記しておきたい。
この研修は、熊本大学法学部教授の大日方信春先生が講師を務められ、憲法とは何か、といった基本的な事項から、知的財産権と憲法、サイトブロッキングと憲法といった、知的財産と憲法との関係に関する具体的な解説に進み、最後に、憲法に知的財産権条項を規定したとするとどのような意義があるか、という点について講演されたものである。当日は、広めの会場で少なくとも100人は受講者がいたと思われ、終了後も質問の列ができ、盛況であった。
私は、今まで憲法について系統立てて勉強したことはなかったが、この研修では、外国の憲法との比較も含めて、日本国憲法の特徴について解説頂き、日本国における憲法の位置付けや、その中での知的財産権の位置付けについて理解を深められたと思う。
特に、憲法の条文に、国家理念の宣言という側面があることは、今まであまり意識できておらず、今回非常に勉強になった。また、知的財産権と憲法との関係に関し、現在の憲法上、創作物を増やしたり発明を奨励したりすることの論拠はなく、また、知的財産権の憲法上の根拠も不明確(29条と13条の両方を合わせて読まざるを得ない)と伺った点も、印象的であった。
翻って、わが国では、平成14年に知的財産立国を謳って知的財産基本法を制定し、知的財産の創造及び活用による付加価値の創出を基軸とする活力ある経済社会の実現に取り組んできたが、未だ道半ばであると言わざるを得ない。また、これを打開するために、国民全体に、創作や発明を尊重する気運を高める一手が欲しいとも感じている。
本研修を受講して、憲法への知的財産権条項の導入が、この「一手」になり得るのでは、と考えた。知的財産権条項の導入により、知的財産尊重の意識を改めて全国民的に高め、また、知的財産権の憲法上の位置づけが明確になることにより、知的財産政策へより多くの資源を振り向けることができるのではないか、ということである。いかがだろうか。
本研修は、eラーニング化される予定と聞いている。今回受講されなかった会員の皆様にも、この機会に是非受講頂き、憲法に思いを馳せて頂ければ幸いである。
大日方信春教授
会場の様子
この記事は弁政連フォーラム第313号(平成31年3月15日)に掲載したのものです。
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